前回は、今年確実に出題されるだろう労基法の改正点、年次有給休暇の確実な取得に関する基本事項について書きました。今回は、原則から少し外れる部分についてです。
ときどき「うちの会社は入社の際に年次有給休暇を10日付与している」という会社を見受けます。このように年次有給休暇の全部又は一部を前倒しで付与している場合、使用者は、労働者に対し、どのように年次有給休暇を確実に取得させればいいのでしょうか。
見ていきましょう。
①入社日(2019年4月1日とする)に10日の年次有給休暇を付与した場合
年次有給休暇を10日付与した入社日(2019年4月1日)から1年の間(2020年3月31日まで)に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。
②入社日(2019年4月1日)から6か月後(2019年10月1日)に10日の年次有給休暇を付与し、翌年度は全社的に起算日を統一するため、2020年4月1日に11日の年次有給休暇を付与する場合
年次有給休暇を付与した2019年10月1日から2020年9月30日までの間に5日の、2020年4月1日から2021年3月31日までの間に5日の年次有給休暇を取得させなければならなくなります。このとき、2020年4月1日から2020年9月30日までは二つの期間が重なる重複期間となりますが、このような場合は、2019年10月1日から2021年3月31日までに7.5日以上の年次有給休暇を取得させなければなりません。(計算式は「月数÷12×5日」)
③入社日(2019年4月1日)に5日、2019年7月1日に5日の年次有給休暇を付与した場合
付与された年次有給休暇の日数が10日に達した時点、この場合では2019年7月1日を基準日として、その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。ただし、入社時に付与された年次有給休暇を基準日前(2019年7月1日前)に労働者が請求・取得していたとき(計画年休によるものも含む)は、その日数を5日から控除する必要があります。
例えば、2019年4月1日に5日付与された労働者が6月30日までに年次有給休暇を2日取得していた場合は、2019年7月1日から2020年6月30日までの間に3日の年次有給休暇を取得させなければなりません。
ちょっと複雑かもしれませんが、頭を整理して読んでみてください。